正社員の品格

 最近、久しぶりに自らの手を動かして設計している。
 どれくらい久しぶりって、ほぼ2年ぶり。今の会社に来てこれが5製品目だが、自分でCADを動かしたのは最初の1製品目のみ。
 じゃぁその間の3製品はどうやって開発したんだ?というと、ほぼ完全に派遣さんまかせ。 私のほうは85%ぐらいの時間は会議と書類業務。残りの時間で、設計されつつあるものを横から見て、チェックしたり変更して欲しいところを言ったり。
 この状況、なんだかなぁ、と思うポイントが2箇所ある。


●なんだかなぁポイントその1
 ある程度の歳になると、こういう管理的な立場にならざるを得ないのかもしれないけれども、スキルの向上になるとも思えない雑務が多すぎる。 計画立てたり、部下に指示して自分1人では出来ない量の仕事をこなすとか、マネージメントらしい仕事に関しては、ある程度の歳になればやらされて仕方ない部分もあるし、身に付いて損は無いので良い。(嫌いだけど)
 問題は、自部署と他部署とか、他部署と他部署の調整や、思惑のすりあわせ業務だ。
 ここは多分にウェットかつ日本的な部分で、身に付くスキルはゼロとは言わないが、その組織、その価値観に非常に特化した経験しか身に付かない。 実はこれが大半の時間を占める。
 いつも心に「転職」の二文字を持っている、不忠な中途入社の社員としては、その会社でしか通用しないことに時間を費やすのは非常に苦痛であり、恐怖だ。焦りも感じる。
 こんなことを思うのは私だけかと思っていたら、私の後に入ってきた中途社員2人も同じことを感じていたらしい。(ひきかえ、私の知る生え抜きの社員は誰もそういう危機感や焦りは感じていない様子)

●なんだかなぁポイントその2
 今まで携わった製品は、みな同じ派遣さんとやってきた。
 できるだけ時間を作っては、派遣さんがCADを動かす横に着いて、チェックしつつ「そこ危ない!あと0.1隙間あけて」「それだと組むとき干渉するからこうして!」等と細かく指示してきた。
 また、派遣さんモデリングが行き詰ると、「どうしましょう・・」と呼んでくる。それはスペース無くてレイアウトが成り立たない、等の場合が多いが、その都度「そこを右に0.3、上に0.3、あと肉一部0.1削って!ほら入った。」 「隙間がとれない? じゃぁ両側0.05づつ削ってその部品斜めにして、あとC面も0.1ふやして。ほら隙間取れた。」等と、泥臭いテクニックを指示してきた。
 本来、こういうことは新人にとって勉強になる(少なくとも自分はそうやって育てられた)のだが、人件費の高さから、そういう「手を動かす」仕事は正社員にあまりさせてはいけない事になっているし、短期間の立ち上げでとにかくスピードが必要なことともあって、新人と同じように仕事する機会はほとんど無かった。
 他の中堅メンバも同じ状況だったらしく、結果、今の2年目、3年目は肝心の設計力があまりない。当然のことだが。
 そして私の設計の仕方やテクニックを一番良く吸収した人間はというと、派遣さんになってしまった。


1つ目のポイントに関しては、「設計させろ」と五月蠅く騒いだ事で、今実際に自らの手で設計出来ている訳だが、2つ目のポイントどうしようかなぁ・・・。直接の部下いないし、あんまり育てるインセンティブないしなぁ・・・。