100人の村にて

 ふるさと納税による確定申告のため、源泉徴収票を用意した。で、せっかくの機会なのでしげしげと目を通してみた。
 普段は、なんだかんだとガッツリ天引きされているので全く気づかないが、総支給ではそれなりの額にはなっている。 日本のサラリーマンの平均年収は400万円だとか、いやいや中央値は350万円だとかいうけれども、それよりは多い。 本当にありがたいことだ。
 
 が! 平均より多いからと言って、なんだろうこの豊かさの実感の無さは。 
 別に「人間の本当の豊かさはお金じゃ無い」とか「都市生活の閉塞感が」とかそいうありがちな話をするんじゃないですよ。 あくまで金銭ベースで「豊かじゃねぇなぁ」という目線の低い話をしとるんです。

 前の道やスーパーの駐車場でさえも、ごろごろBMWやベンツがおりますが、あんなもん買える人間がなんであんなに沢山おんねん!ちう話です。
 こっちは外車どころか、毎月子供の習い事代に頭を悩ませているというのに。進学塾たけぇよ。ラウム10年目だけどまた車検通すよ。


 と、むんむん世の不公平に憤っていたところ、妻に、じゃぁお前の言う豊かさとは何なのだ、と聞かれた。
 「豊かさ? そらポルシェよ!」と即答。
 「良いかね、まぁ言うてもBMWやベンツは無理したら安いグレードを買えんことも無い。中古もあるし。
 が、ポルシェは違う。 ポルシェの有る家は、確実に嫁さんが別のえぇ車に乗っとる。
 いやひょっとしたら、嫁さんのアシグルマの他に、VWかベンツのでっかいバンが3台目にひかえとる可能性がある! というわけで、豊かさとは、ポルシェなのや!」
  
 我ながら明快な良い答えだと思ったのだが、妻にあきれられてしまった。
 妻の言い分はこうだ。
 周囲のおかぁさん達の中には、「2月3月の保育料がいっぺんに引き落とし!困るわぁ・・」と言っていたり、引き落としや子ども手当の振り込みを細かくチェックするために週に何回も通帳記入に行ったりする人が居る。「お金たくさんおろすと使っちゃうから、何千円かづつ分けておろす」みたいな人もよくいる。そんな風景を見聞きするにつけ、そういうギリギリ感の無い自分は、豊かでありがたいと痛感しているとのこと。


 そうですか・・・。なんだか私すごく俗物みたいじゃないですか・・・。


 「でも、まぁ言いたいことはわかったんだけど、通帳記入は不要じゃ無い? 
  そんな頻繁なら、ネットで調べりゃいいじゃない。ネットバンクにして。」
 「ネットバンクなんて怪しいから興味ない、ていう人も、おうちにネット無い家も多いんだってば。」
 「・・・スマホありますやん。それに大抵の都市銀ネット対応してますやん。」
 「それもなんだか面倒だし、なんだか怖いから敷居が高いんだってば。」
 「それに、何千円かづつ頻繁におろしてたら、そのたびに手数料105円かかりますやん。そんなん消費税が何%か余分に取られてるのと全く等価ですやん。」
 「だからそういう話じゃないんだってば!」
 「俺、『パンが無ければケーキを食べればいいんだわ』みたいなこと言ってんのかなぁ今・・・」
 「そうねぇ・・・」

 世間様は「そんなん」なのか・・・。 なんとかディバイド、みたいなものを感じました。