世間様の仕組み

 「日本の大学は、入るときは倍率が高く難関だし、募集枠も一般入試に偏っており制度的に狭き門だが、入ってしまえばレジャーランドだ。これが日本の大学生をダメにし、ひいてはそれを雇用する企業にも損失を与えている。社会をダメにしている一因でもある。
 たった一回の試験では偶然の要素がとても大きく、それで人生が決まるような選抜方法は学生にとってフェアではないし、企業にとっても不都合だ。(たまたま調子の悪かった優秀な人材を逃してしまうので)
 もっと入りやすくして、その代わり入ってから継続的に厳しく学ばせ、フルイにかけて行く、そういう流動性を持った方式に変えるべきだ。」
 とは良く耳にする論旨だ。
 企業の側からも、こういう提言聞くことは多いような気がする。 「大学しっかりしてよ、こっちが困るんだよ」的な。
 わたしも基本的には文句は無い。(大学時代、遊んでばっかりいましたけども。)


 が。こう書いたらどうか。


 「日本の企業は、入るときは倍率が高く難関だし、募集枠も新卒採用に偏っており狭き門だが、ひとたび入社してしまうと、怠けていたり能力が劣っていても首を切られることはほとんど無い。
 これが日本の会社を非効率なままにしている一因である。
 一回の採用試験では偶然の要素がとても大きく、それで人生が決まるような選抜方法は、学生にとってフェアではないし、企業にとっても損失だ。(たまたま調子の悪かった優秀な人材を逃してしまうので)
 もっと入りやすくして、その代わり入ってから継続的にフルイにかけて行く、そういう流動性を持った方式に変えるべきだ。」
 

 結局企業も大学も、同じ様な価値観のもとに運営されるシステムと言えないでしょうか。お互い様、というか。 まぁ同じ日本人のつくる組織だから、それで当然とも言える。

 じゃぁお前はカンタンに首が切られる会社がいいのか、と言われると、それも違う。 要は、「優秀な者が評価され、怠け者や明確に能力の無いものはご縁が無かったとする」という状況にしたいだけなのだが、なかなかそうも行かないのが現実だろう。
 誰かを首にできる権力は強力だ。好き嫌いに任せた恣意的な運用もあろうし、支配される方は絶対服従だ。「僕は下位20%以上の能力があるから無関係。気にならないね。働き方も変わらない」なんてことには絶対にならないだろう。
 集団に対する忠誠心や信頼なんかも確実に低下するだろうし、確実にストレスの多い方向には向かう。「日本的なぬるま湯が良かった」という人間は多数いるだろう。

 結局、非の打ち所が無い人事制度なんて無くて、「どれが優れているか」という絶対的な話ではなく、メリットとデメリットがあるなかで「何を選択するか」、つまりは価値観の話にすぎない。 その上で人間は、デメリットを克服しようと味付けを変えようとするささやかな努力をするわけだ。
 私はどうかといわれれば、あんまりギスギスするのもイヤだけど、半年ぐらいの試用期間中は首を切れる制度にしたほうが絶対良いと思うなぁ。企業はもちろんのこと、学生にとっても。「就職難だから」と向かない仕事に噛り付いて頑張るのは、悲劇だ。
 で、企業の採用活動も、新卒以外のルートをずっと拡大すべきと思う。これが「入りやすく」の部分で、これがないと片手落ちだ。
 卒業3年ぐらいまでは、新卒と全く変わらない扱いをするとか。でも運用難しいな。「前の会社、辞めてるけどなぜ?」とかなるだろうしなあ。