蚊帳の外

 うちの部署は年数回、「偉いさん(課長以上全員)で2泊3日ホテルにカンヅメ会議」 という聞くだに生産性の低そうな儀式があるのだが、先週末それが行われた。
 そこで私の元課長が、俺を「開発要員としてこっちによこせ」という提案をする、と言う話は事前にさる筋から聞いていた。 
 俺が辞める話は彼にはしていなかったので、彼はそこで初めて知るんだろうな、とちょっとすまなく思っていた。
 ところが(その会議があった)週末が空けて、3日目の今日。彼の態度はいたってフツーだ。 何も言ってこない。 なんか拍子抜け。
 ・・・・・と思っていたら、夕方。 あわてた様子の彼に、「ちょっと茶でも飲もう」と誘われた。
 あれー?今さらこの反応?と思ったら、どうやら元課長はつい今しがた茶飲み場で雑談してて、俺の辞める話を聞いたらしい。 先週末の会議の時に、俺をくれと言った時には、部長は何も言わなかったと。
 「部長も知らなかったって事はないよな?」と聞いてきたので、「いや、辞表も書いて受理されてますから、知らないって事はありえません。」
 どうも機械図面が引けて(一応)メカの検討が出来る私をアテにしていたらしい。
 「計算が狂った!! なぜもっと早く言ってくれなかったんだ!」とグチグチ言っていた。
 「アンタこそ、今の今まで黙っていただろうに。もっと早く言ってくれてたら、辞めていないかもよ。」とか、「アンタが欲しいって言ったところで、俺がすんなりそっちに移れていた確率ってそんな高くないんじゃないの? 今回だって完全にハブられてるんだし。」
 と思ったが、アテにしてくれていたのは嬉しいので、黙っておいた。