ヤクザ企業の考察

 今の会社だが、「無駄な部分には徹底的に金をかけない」ことをポリシーとしている。
 それを推し進めた結果、「本質的な付加価値を産まない」とされる、部品の購買部門(開発部隊が、試作等や金型の製作を頼む所。)の人員も極限まで減らされ、彼らのアウトプットも付加価値ではなく、「どれだけの件数を回したか、どれだけ安い値段で発注したか」で評価される。
 仕事の質はあまり問われないのだ。
 付加価値を産まない=誰がやっても一緒 という、考え方がバックボーンにあるから。

 先日、私は試作を購買部門に依頼する用があった。
 いきなり図面を渡すより、前もって「来週こんなものの試作を依頼しますよー」ということを言っておいたほうがいいと思ったし、大まかな費用の見積もりも欲しかったので、顔を出しに行った。
 そしたら、殺気立ったおっさんに、「おおまかな値段だぁ? そんな事を聞きにウチの時間を使いに来るな、開発内の知識で何とかしろ! 正式な発注の前に、こっちの工数を取るような事をするな!」 と怒られてしまった。
 
 かなりカチンと来たのだがもう大人なので、「じゃぁ来週、10部品ぐらい見積もりだすって事だけは覚えといてください」 といって帰ったのだが、なんでこんな事になってるんだ?と考えた末に思い当たったのが上記の状態だ。

 それにしても、この状態はマズイ。 今回ぐらいなら、開発の知識で何とかなるかもしれないが、開発部隊も全知全能ではない。 結局の所、物を作っている所とのやり取りは無い訳で、その辺の情報を、試作屋と直接やりとりしている部門がある程度溜め込んでくれていないと、「ちょっと難しい加工で、今まで誰もやったことないんだけど」って時に。誰に相談も出来ない。

 同じ様な状況に、製造技術部門もなっている。
 彼らは製造部門と開発部門の橋渡しで、生産のノウハウを蓄積する大変に重要な役であり、前の会社はココの部門の層が厚く、頼もしかった。 少々の無理でも、一緒に考えてくれてし、提案もしてくれた。
 ところが今の会社の製造技術は、「開発が考えた製造方法を、生産現場になげる」のが仕事で、現場が出来ないとなったり、品質に問題が出たら、そのまま開発に 「あかんかったやないけゴルア!!」 投げ返してくる。

 「各部門が、どのくらいの付加価値を産んだかを出来るだけクリアにし、給料なり何なりで報いる」というこの会社のスタンスはとても好きなのだが、やはり開発はチームワークなので、あまり役割を細分化しすぎると、こういう弊害も生じてしまうのだな。
 課長ともそれを話したが、やはり問題になっていて、いろいろ対策を打とうとしているようだ。
 まぁあまり「みんな一丸になってやろうよ!」てなると、責任の所在や、特に頑張った人が相対的に評価されなくなってしまうと言う難しいところがあるんだけどね。
 お釈迦様の言った「何事も中庸が大事」ていうのは、多くの場合真理だとつくづく思う。