欲しがりません勝つまでは

 課長から、今期の部の方針の説明。いろいろと素敵な事実を聞かされる。

  ・今年は飛躍に向けて大事な年!会社としてはガンガン攻めるぜ!
  ・でも予算削減の折、申請した予算を9割削られました。
  ・だから業務目標のうち、半分ぐらいの項目が予算ゼロです。試作も実験も出来ません。

 oioi、そりゃ無いze! 春一番のジョークかい?!

 しかも数少ない予算のほとんどは、従来機の改良に当てる予定。
 ちなみにこの従来機と言う奴が曲者で、使っている技術の素性が悪く、今までに一台も売れていないという代物。部の方針では、毎半期必ず「市場性の有無を判断する」と槍玉に挙げられている。
 しかしお偉いさんの誰かが失敗を認めたくないらしく、未だに延命している。おかげでずーっと、うちの課は改良という名前の苦役を続けさせられている。
 特に、売る当てもない装置なのに、5人もの人間が消耗品の検討をしている様は見ていて悲しい。しかもここ数年ずっとだ。
 そして来期になっても、この従来機の改良は続く。なぜなら社内の研究者がこの装置を使っているから。おかげで、ただでさえ少ない金と工数はこの従来機に吸い取られていく。部の方針ではまったく言及されていないこやつに。