本日のキチガイさん

 大型装置を移動させる人手として、課長、係長とともに地下倉庫に呼ばれる。
 この倉庫は、「都合が悪いので見たくないもの」をとりあえず放置しておく役割を担っていて、一つ数千万円もする「ゴミ」がたくさん置かれている。
 真っ暗で湿っぽくカビ臭い様は、まさに墓場か中世の牢屋と言えましょう。
 そんな都合の悪い物たちの中でも白眉は、「作ったものの、一台も売れないまま販売中止。もはや売る予定はないが、書類上は販売在庫なので、捨てると損金が発生する。誰も責任をとる気もないので、捨てられない。」という装置だ。
 1台2000万ぐらいだっけなぁ。それが5台以上並んでいる。邪魔だしムダ。
 大型装置を動かす音頭を取っていた、部署の事務仕事担当のおっさんに、「これどないするんですか?」と聞いてみたら、驚くべき返事が。
 「あー、それ、うちの設備にすることになったから。使ってることにしなきゃいけないから、全部梱包といて、セットアップしておいてね。近いうちに。」
 一瞬悪いジョークかと思ったが、100%本気だった。
 一人で無駄なことをするのは勝手だが、いったいそれで誰が「あ、使ってるのね、結構結構」と騙されてくれるのか。ていうか騙されたフリさえしてくれまい。
 どうせ監査があったら「どう見ても使ってないけど、まぁ目をつぶってYO!」と言わなきゃならんのだから、このまま放置しておく方が1京倍マシだ。 ていうかどうせ金かかるんだから捨てろよ早く。
 使えないジジイだとは薄々感付いていたが、さすが、粒よりの無能揃いのこの部署で、定年間際になってもヒラやってるだけの事はある。
 まぁそれよりも、課長と係長が必死になって「それはやめましょう」と説得していたのが面白かったです。