最後のご奉公

 労働組合の集会があり、参加した。 
 今回は社員全員参加ではなく、「各職場にいる組合の手先」以上の集まりだ。 もちろん本当は出たくなかったのだが、これが最後の組合イベントの可能性も高いので、殊勝にも出席したという訳だ。
 で、最初は我慢してツマラナイ話(来年の予算はこうしますとか、組合の方針だとかをただ読み上げるだけ)を聞いていた。
 それが終わると、「5〜6人の班に分かれてディスカッションをしましょう」みたいなのになったのだが、それを仕切りに来た組合役員がいけない。
 組合の居並ぶTの中でも、最も俺が嫌いな奴だったのだ。融通も機転も聞かず、用意した答えしか繰り返さないのが特徴。(たとえ俺が論点を変えて質問しようと、当初の答えをオウムのように繰り返した挙句、「これで答えになっていますでしょうか」とか言いやがる。恥とか無いのかお前は)
 俺はコイツと何度も衝突している。(そして毎回、見かねた組合幹部が助け船を出しに来る)
 そんなTがディスカッションの仕切り役。 しかもお題は「仕事や会議の効率化」。
 皆、何を言っても組合の方針は変わらないことを痛感しているので、やる気なく押し黙っている状態なのに、だらだらと「えー、活発なご意見を期待したいですね」みたいな事をへらへらしながら言っている。 空気を読めこのデブ。 一体何を期待しているのだお前は。 それなりの進め方って物があるだろう。
 時間だけがムダに過ぎ去っていく。そう、ムダだ。
 みんないよいよ黙りこくり、することも無いので、手元のパックジュースの成分表とかを何回も何回も読んでいる。
 しかしデブは相変わらずへらへらしながら、「フレックスが無くなったおかげで、仕事のやり方とか、会議の時短化とか、業務効率って点で意識しだした事ないですか?」とか言っている。「フレックス廃止は善」という答えを引き出したいらしい。
 よっぽど「そんなん出来とったらこんな無駄な時間すごして無いやろ! お前の口から効率化とか言うんやったら、さっさと終わらせてみぃデブ!!」と言おうかと思ったが、俺ももう大人なので「あ、ボク時間がね」とかテキトウ言って逃げてきた。 やっとれんわ。