戦い

 店に入ると、人気も暖房っ気も一切がなく、えらく寒い。寒すぎる。
 片隅の座敷にその家の子どものランドセルと上着が放り出してある。
 なんだか激しくいやな予感がする私に、情報収集していた妻が「ホルモンいため定食がお勧めらしい」と教えてくれる。なのでそれを頼む。
 しばらく経って出てきた物を見ると、どう見ても野菜炒め定食にしか見えない。いくつか1平方cmぐらいの薄い豚肉の破片入っているのみだ。違う。これは断じてホルモンではない。スーパーで、「豚肉肩切り落とし」として売ってるただの安い肉だ。
 「ホルモンって何か知ってるんか?!」と憤慨する私に、重要情報を今更に開示する妻。「あ、店のおばちゃん、『完全なホルモンではない・・かな?』とも言っていた」
 なんじゃそりゃぁ!! もっと先に言わんかぁ!! 
 そんなヤバイもん頼んでもうたやないけ!
「でもそれ教えてても、結局好奇心に勝てなくて頼んだでしょ?」
 よくわかってるじゃぁないか・・・・。