人身売買2

 たった一日で色んなネタを提供してくれた物件捜しだが、こんなこともあった。
 休日ということもあり、事務所には入れ替わり立ち代り客で賑わっていた。 そんな中、キレモノ店長は手を抜くことなく、客一人一人と話し合い、本人が漠然と抱いているニーズの抽出に手腕を見せていた。
 が、俺が物件を見終わって事務所に帰って来た時、そんな店長がてこずっている客がいた。
 35〜40ぐらいのだらしなく太ったおっさんだったのだが、中途半端な長髪で外見上はステレオタイプなオタクって感じ。
 聞くとは無しに聞いていると、そのおっさんは中国人留学生の友人のために、自分名義で家を探しているらしい。月4万円ぐらいで。
 初めは「困っている留学生の為に、一肌ぬいでやっているのか。人は見かけによらないなぁ」と思った(ほら、金持ちおっさん事件もあったし)のだが、聞いていると何かおかしい。
 おっさんは別に留学生援助のボランティアとかの経験がある訳ではないらしく、店長に逆に「そういった場合は通常、支援団体が保証人になったりするんですよ」等と説明されている。 しかもその中国人留学生の「お友達」は若い女性らしい。
 最後には店長に「おかしな話ですけど、その『お友達』の方が家賃を払えなくなったりしたら、お客さんに補填していただける、という形なんですかね・・? いや、お友達の間柄でそれも変な話なんで、例えばの話ですよ?!」とか聞かれていた。 キレモノ店長の歯切れの悪いトークを聞けて俺は面白かったのだが、客は「とやかく言わず、俺の名義で借りれればいいだろう!?」と切れていた。
 最後まで見届けたかったのだが、用も終わったのでそこで帰ってしまった。
 まぁ人生いろいろですな。