片棒かつぎ

 今時いない方が珍しいですが、自分の課にも、派遣さんが一人働いています。男性。
 貧困問題と格差問題には人並みに興味があるので(堤未果?読んでますよえぇ)、いろいろ考えさせられてしまう。


 愛する我が社は、金は出せん!と派遣さんも驚くほど低い時給で買い叩いており(さすが永遠の中小企業)、そんな条件だと、ありていに言って「使えない」人しか来ません。
 とくに売り手市場である昨今。 気ばたらきが良かったり、能力のある人は、自分の置かれた境遇にも気づいてしまうので、当然もっと好条件の所とか、正社員のアテを探して移ってしまう。
 逆に言うと、こんな現状に甘んじている派遣さんは、目端が利かないか、行動力がないか、能力が足りなくてこんな所に吹き溜まるしか選択肢がないか、いずれかの可能性が高い。 厳しい話ですが。
 そんな派遣さんの時給と労働時間をかけ算し、さらに派遣会社に剥ぎ取られる割合を加味すると、「年収○○○万円世帯」のできあがりな訳で、そこに浮かび上がる搾取の構図に暗澹たる思いにとらわれてしまう。
 「代替可能な労働力は買い叩かれる」、当たり前のことが起きていると言えばそうですが、是非はともかくとして、派遣法の精神はみたいなものはどこに行ったんでしょうかねぇ。

 
 そしてこうも思う。 年収と婚姻率は明確な相関関係が示されるなか、彼の結婚と、そして老後は将来はどうなるのか、と。ワーキングプアを経由して、中長期的に行き着く先が、生活保護もしくは(食うに困って)犯罪だった場合、そのしわ寄せは税金なり治安の悪化として、社会全体にふりかかるでしょう。 
 ということは、今私が正社員として荷担しているこの行為は、彼自身からの搾取であるだけでは無く、「公共から私企業への所得移転」とも捉えうるのではないでしょうか。


 さらに、です。 こんなにも心を痛めたふうな事を書き散らしつつも、私は明確に搾取の側に立ちます。正社員という、日本の法制度上ある程度守られた立場でありつつ、市場原理の恩恵受けまくりです。 こりゃぁ偽善者でさえない。「善」何もしてませんから。
 なおかつ最もタチの悪いことが、この一連の思考の底流に、「あー俺はちがう。よかったーラッキー」という、安心感としか言えない感情が確実に横たわっているところ。ワイドショーで陰惨な事件に眉をひそめている(ふりをする)主婦と同じ、とてもゲスい根性です。
 いや、そんな自らのさもしい根性は認めたくは無いんですが、ある物は仕方ないよねぇ。


この話、じつは続きます。