以心伝心

 ややブラックな中小企業に勤務している関係上、私の帰りは概して遅い。自動的に妻との会話は、平日夜は出来ない。
 なので、妻が、私に見せたり喰わせたりしたいと思った物は、食卓の私の定位置に置いておくことになっている。私が夕食時に嫌でも気づくという寸法だ。
 私宛の郵便物、子供のテスト、ママ友からのお菓子のお裾分け・・・・いろいろだ。


 そんなある日、帰ると黒い液体が入ったペットボトル(500ml)が置いてあった。コーラとは珍しい。
 妻も私も炭酸飲料はあまり好きでは無く、自分で購入することは滅多に無いのだ。

 でも、コーラだけはごくごくたまーに飲みたくなるんだよなぁ、なぜか・・・とか思いながらペットボトルをじっと見ていると、めずらしく起きていた妻が声をかけてきた。

 「あ、それ墨汁だから」

 なんか俺、怒らせるような事したのだろうか・・・・。