皆様ご存知の有様になっている東電の原発。
社長だか会長だかが「判断は間違っていない」と発言して怒りにガソリンをくべていたのは記憶に新しいのだが、さて、実際は彼の判断(最初、海水注入をためらった事について)はどうだったのか?
ここで、「結局放射能を撒き散らす事になったのだから、判断は誤り」というのは、(マスコミでは良く見られる論調だが)浅はかだ。
なぜならその当時は、ここまで事態が悪化するかどうかは不明であり、かたや原発を救えた可能性もあったからだ。
なので、判断の誤りを責めるなら「なんであれ放射能を撒き散らす可能性があった時に、最大限の安全策をとらなかった」のが正しい。
微妙な言い回しの違いに見えるが、この差は大きいと思う。
さて、結局どうあれ、海水注入をためらったのは不味い判断だったのだが、なぜ彼はそうしたのか。当時の彼の身になって考えてみた。冷却がうまくいかず、海水の注入を提言された時、なにを思ったのか。
まず、日頃あれだけ「何があっても大丈夫」と吹聴していた原発がこの有様。すでに、首が飛ぶのはほぼ確信していただろう。
そこで思い浮かぶのは、「それ以上にどのくらい非難されるか」だ。株主代表訴訟なんかも当然脳裏に浮かんだだろう。
ここで情況を整理してみる。
当時の彼が取りうる手段(海水を注入する/しない)と、当時予想された結果(事態が収まる/悪化する)でマトリクスを組んでみよう。
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1 海水を注入して、事態が収まった場合
原発は2度と使い物にならない。長期に渡って電力が足りなくなり、首都圏に多大な損害を与える(つまり、現在の状態)
⇒責められる。
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2 海水を注入して、事態が悪化した場合
上記の停電に加えて、放射能が漏れ、えらいことになる。
⇒ものすごーく責められる。
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3 注入せず、事態が収まったとき
原発は助かるし、放射能漏れも無い。停電の影響も最小限。
⇒もしかすると社長辞めなくていいかも。訴訟も起こされないかも。
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4 注入せず、事態が悪化した時
現実にはこれだった。あとから注入することになるのだが。
⇒ものすごーく責められる。が、「2」の時と同じ。
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結局、3以外はどう転んでも責められるのがポイントだ。 であれば彼にとっては「注入しない」のが自然な流れだったろう。いや、分析してるだけで、弁護する気はさらさらないですが。
今後のことを考えると、何であれトップというものに(政治家も含まれる)こういった選択をさせないためには、下記が必要だろう。
・「安全第一」に判断する手順を明文化し、内外にコミットしておくこと
・上記の手順にそって物事か行われたなら、結果がどうころんでも、マスコミや国民は決して非難せず、賞賛すること。もしくはそういう文化を醸成しておくこと。
・・・・ま、後者が無理だから、こういうことはまた起こるんですけれども。