今年の盆休みも嫁さんの実家に里帰りしていたのだが、このうちは古来からの盆の風習が良く保存されており、たいそう興味深い。
 それはただ田舎だから、という理由では無い。(そもそも、市内中心部からそれほど遠くは無く、けっこう便利な場所だ)。 
 農家という、土地や季節とつよく結びついた生業を何百年も続けるなかで、風習がライフスタイルに不可分に編み込まれているせいだと思われる。
 さらに、ご実家の日本家屋(とりわけ縁側)も重要な要素になっている。 縁側という内外の緩衝地帯が、先祖の里帰りには不可欠なのだ。
 まず、田は庭先すぐの場所からから広がっており、そこに垣根は無い。そして盆となれば田の端(家屋に一番近い部分)に木の台を作り、野菜や米、水をそなえ蝋燭をともす。 
 これでまずは広大な田をめがけて帰ってきた精霊を、庭先に集合させるという塩梅だ。
 そして縁側に提灯をつるすことで、精霊達を庭から軒先に誘導したら、床の間まではすぐだ。 多数並べられた位牌まで先祖は迷わず帰ることができるだろう。

  
 他の風習として、盆の数日間は、夜は家族でお経タイムがある。ご先祖様達(つまり床の間の位牌)にむかって、5分ほどむにゃむにゃやるのだ。
 お経は、お大師様の本場!瀬戸内なのでもちろん般若心経だ。 (ちなみにこのシーズンは、床の間の掛け軸も 「四国八十八ヶ所のスタンプ帳(コンプリート済)」 に変更される)
 ちなみに、妻実家の縁者の方々は、物心ついたときから盆や法事のたびに般若心経を唱えてきているので、けっこうそらで憶えている方も多い。
 
 そうして、盆が終わると位牌は仏壇に戻り、床の間も通常モードに戻るのだが、掛け軸も普段の「天照大神」とかいたものに変わる。
 アニミズム的な価値観を軸に、仏教と神道をおおらかさに使い分けており、なんだか日本らしくて素晴らしいと思う。