聖者の行進

 いつもの床屋(カット1550円)に散髪に行った。
 ここはいつもラジオがかかっているのだが、この日は野球中継だった。掛布が解説をしている。阪神戦らしい。
 野球には全く詳しくはないが、他に興味の向ける先も無いのでぼーっと聞いていた。
 と、急に雰囲気が変わった。「ではここで僕から、バックスクリーン3連発以来の衝撃を皆さんにお届けします!」 お、なんだなんだ? 「なんと、JA淡路から淡路牛1万円分を視聴者の方から5名にプレゼント!!」 宣伝かよ!! しかも5万円分、ちょぼくせぇ!!

 
 あまりのくだらなさに心に深く刻み込まれてしまい、散髪が終わるまでこの事件(そう、事件と言ってしまって良い)をずーっと反芻してしまった。
 なんか、盛者必衰とか、メシを喰っていくことはキレイゴトではない事とか、過去の栄光を切り売りするしたたかさとか、逆に胸を張ってそれを行う潔さにかえって誇りとか決意の輝きを感じてしまったりと、まぁいろいろでした。
 大正から昭和初期のあたりの、ハタチやそこらの青二才がうだうだ悩んでいる薄っぺらい純文学なんか読むより、はるかに滋味深く、そして考えさせられる体験でした。