本能

 今から20年以上前のこと。長田区の祖母の家によく遊びに行っていたいくろう少年は、すぐ近所の阪神高速を見上げていつもこう思っていた。「これ、壊れへんのかなぁ」
 昔の阪神高速は、細いT字型の柱の上に、重たい道路が乗っかっていた。
 道路の幅に比べて、Tの真ん中の柱は細く頼りなく、子供心にもバランスが悪く見えた。
 で、それからしばらく経った1995年、高速は震災で見事に横倒しになった。
 そん時からである。
 「なんだがおかしいなぁ」と直感的に思うものは、大体においてヤバイ。そんなこと意識しだしたのは。
 そして「なんだかおかしいもの」がたとえ現在成り立っていたとしても、なにか大きな犠牲を誰かが払っていたり、矛盾を内包していたり、時限爆弾が時を刻んでいたりすると言うことも。