人間には 「利益を得るときにはリスクを取らないが、損失回避にはリスクを取る」というおかしな特性があるという。
どういうことかというと。
「1/2の確率で10万円がもらえる」という選択肢と、「必ず5万円がもらえる」という選択肢があれば、後者を選ぶ人間が多い。期待値は同じなのだが。
ところが、「1/2の確率で10万円を損する」という選択肢と、「必ず5万円を損する」という選択肢があったときには、前者を選ぶ(リスクをとる)人間が多くなるという。
確率や金額の大小である程度は結果は変わってくるとは思うが、経験的に思い当たる節はある。 けれど理屈で考えると不思議なメカニズムではある。
で。
身の回りで、そんなケースなのかなという現象を見かける。
このご時世、職場でもコロナ拡大防止のため、面倒な仕組みが徹底されている。
毎朝、体温や体調不良の有無を申告するというものもそのひとつ。
そして、項目のうちに「だるさ」というものがあるが、もちろん「無し」にチェックを入れる。
「朝だるくなかった事なんて記憶に残ってる限りねぇよ!!」と思いながら、いれる。
・・・・「このブラック企業に『さぁー今日も一日、がんばっちゃうぞぉー!』なんて奴いるかよ!!」と思いながら、いれる。
だって「はい、だるいっす」って正直に言っちゃったら面倒なことになるからね。コロナ狩りは怖いからね。
私以外もそういう状況だと確信しているのだが、昨今そんな事なかれな構図がもう一段深まっているのだ。 どういう事かというと。
年末年始急に寒くなったこともあってか、最近軽くセキをしていたり、鼻声だったりする人を見かけるようになった。 あきらかに万全の体調では無い。というか風邪だ。
毎朝の申告の項目にも当然それらの項目はあるのだが、チェックは入れていないのであろう。だってかなり面倒なことになるからね。
危機管理上はあきらかに間違っているが、なぜこうなってしまうのか。
ポイントは風邪気味だからといって即コロナであるとは限らないことだ。
風邪気味になったとき、本人には下記の選択肢が与えられる。
選択肢1「風邪の症状があると宣言する」
⇒その時点である程度の損失が確定する。
選択肢2「黙っている」
⇒ふつうに治癒したら損得無し。
もし本当にコロナで、かつ重症化したら大きな損失になる。
が、その確率は低い。
こうなった時に「損失回避のためにリスクを取る」傾向が働くと後者を選んでしまうのは無理も無い気がする。
ちなみに、こんな状況を変えるためには職場の風土を変えるしか無いとは思うが、現状は 「風邪と認めてしまうと自他の業務に大きな影響が出てしまうので、周囲も本人もわざとそこに触れない」 という空気ができあがってしまっている状態だ。
実は私も先日、頭痛がしたので「頭痛いので今日は定時で帰ります」と上司に申告したら、「肩こりだよね! うん、肩こり肩こり! 天気悪いし!」と肩こり説をゴリ押しされてしまった。
こうやってコロナは広まっていくのね。。。