とんてんかん

 昨年家族にわがままを言って、ふるさと納税でそこそこの額をつっこませてもらった「小刀作り体験」。なんとちゃんとした日本刀の工房で、小柄(こづか)という「お侍さんの便利ナイフ」みたいなものを鍛造から仕上げまで体験させて頂けるというものです。

 しかし納税までしてなんだか安心してしまい、チケットが手元に届いてから1年以上経過てしまったのですが、さすがに12月にもなってしまうと2022年のうちに完了させてしまいたい気持ちになり、慌てて予約してみました。

 

 で、岐阜県にある工房で、実際に体験してきたのが下の写真。隠れていますが、左手はふいごの取っ手を前後させて空気を送り込んでいます。ちなみに「ふいごの様な息」とは良くある表現ですが、本当に生き物がそこにいて深く呼吸してるとしか思えない音とリズムがして、なにげに感動しました。

 作業には工房のお弟子さんがマンツーでついてくれるのですが、6割ぐらいはその方が作ってくださいました。でもひと通りの工程は体験できたので、自分で作った感は得られて満足。 

火入れ

 そのお弟子さんは控えめでかつ日本刀に関する知識も深く(そらそうだ)とても話が面白かったのですが、いろいろ聞いているともちろんただの好青年ではなく、21世紀にこんな世界に飛び込むだけあってけっこうキチガイ(褒め言葉)でした。

 聞いていちばん面白かったエピソードは、下記。

「前はマンションに住んでたんですが、研ぎをすると部屋も服も汚れるでしょ? 

 だから、ベランダで裸でやってたんですよねぇ。真冬でも。

 そら寒いし水も冷たくてつらいんですけど、手が究極に冷えると逆に水が温かく感じるようになってくるんですよね。 そしたらしめたもんで『ボーナスタイムきたー!』って感じでした。 

 でも作業終わると身体が冷えて固まっちゃって、なんとか立ち上がったは良いけどそれ以上歩けなくて部屋で倒れたことあります。」

 あぶないですやろそれ。

 

 あと、思ったのが「間違い無く世界一の技術なのは、日本刀の製法自体ではなく研ぎだなぁ」でした。

 だって主な工程でも6段階ぐらいあるんですぜ。 しかも「刃紋をキレイにだすにはこの砥石じゃないと」とか「最後の仕上げにはこの砥石の破片しかだめで、しかも何十万もだして買っても実際に使ってみてハズレのことがある」とか。

 しかもハズレってなんだよ、ていうと「ごくごく細かい傷がついて、完全に完全な鏡面にならない」って。こだわりすぎでしょ。狂っている(褒め言葉)

 だいたい、博物館にかざるわけでもないのに、お侍さんみんながピッカピカの刀を持っていたんだから恐れ入る。 ちなみにこれもそこで聞いたんですが、ここまで磨きの技術が進んだのは平和になった江戸時代だそうです。磨き過ぎると切れ味がおちるそうな。 平安・鎌倉時代につくられた刀も、時代が下って「うわ、なんか最近めっちゃ磨かれてんねんけど」と驚いたことでしょう。

 

 まぁいろいろ勉強になり、非常に興味ぶかい体験でした。 オススメ。