特技

 これと言って面白みの無い没個性な私だが、ちょっとこれだけは凄いヨという特殊技能がある。それはズバリ、「ねこセンサー」だ。猫が体の一部でも見せていたら、遠くても暗くてもかなりの確率で気付く。
 「屋根から体の一部だけ出ている猫の存在に気付く」とか、「路地のゴミ箱の陰にいる猫を、大通りを通りながら気付く」とか、その性能は折り紙付だ。自分でもなぜ発見できたのかよく分からない程の時も多い。
 もはやその感度は民生品レベルではなく、軍用レベルと言って良いと思う。(そんなセンサーが存在するとしての話だが。)
 この特技は昔から持っていた物ではなく、ここ数年で完成したものだ。
 常住坐臥、常に猫の姿を求めているうちにいつの間にかここまで能力が高まってしまった。
 自分がそこまでの域に達するまでは、他人のそんな「発見能力」を目にする度に、ただただ感嘆し、不思議だった。
 友人Tが、「あっ。」と言って木に走り寄って、葉の裏にいる陸生ホタルの幼虫を見つけた時。ただしそれが昼間だったと言うのがミソだ。光っていても分らなかった筈。どうやって見つけたんだ、アレ。
 ボルネオのジャングルで、完全に木と同化しているモニターリザードを、何十mも離れていとも簡単に見つけたガイドさん。
 どうやら最近分って来たんだが、視界の中で猫がいそうな所があればチェックし、得られた画像と、脳の中の猫の様々な姿勢のシルエットとのマッチングを無意識に行っている様だ。それも常に。