プロのお仕事

 会社にて。次の製品の企画会議があった。
 デザイン部門が主導のもので、他社の製品を並べて、他のメンバから意見を聞き、新製品の意匠や使い勝手の狙いどころを決めようというものだった。
 こういった場合の通例上、プレゼンする側は「落とし所」をきめており、デザイン部門の担当者もだいたいの方向性は腹の中にある模様で、並べられた他社製品にもそれが反映されている。
 担当者が進みたくないデザインのタイプ(これをAとする)は、ちょっと冴えない他社製品が割り当てられており、他の比較的マシなサンプルは皆、「落とし所」を匂わした方向の機種。


 そして始まった会議も、担当者の思惑通りにすすんでいる。ううむ。
 やがて「Iさん(俺だ)はどうですか?」と聞かれた。
 そんな見え見えのレールに乗っても面白くないので、議論に厚みを持たせるために「いやぁ、ぼくはこのAの製品結構いいと思いますね。ボタンのレイアウトや割り当てがイマイチなんで使い勝手は良くないですが、そこさえなければ、外観はコストかけていない割りに悪くないと思うんですよ。
  白とグレーブルーのツートンで、すっきりしていて洗練されたイメージが。MarkIIぽいし。」

 それを聞いて、それまで黙っていたデザイン部門の責任者が、すごい勢いで反論してきた。
「でもIさん、デザインがいいって言っても、これはエゥーゴカラーでしょう?!
 MarkIIはもともと、ティターンズカラーの黒ですからねぇ!!」

「・・・・そっスね。」
 結局押し切られてしまいました。