オトナの階段

 たまに行くある飲食店にて。
 カウンターに座ったのだが、隣でやや違和感のある5人ほどの集団が飲んでいた。
 違和感とは。 一人だけ50〜55歳くらいのおっさんで、残りはみんな30は達していないであろう若者達だったのだ。間がいない。
 年齢だけでなく、服装や態度も対照的だ。
 おっさんは私服とも作業着ともつかない格好をしているが、若者達は地味なスーツをビシっと着ている。それに、おっさんは酔っ払い然として業界の裏話や社会人の心得を若者達にトクトクと語っているが、若者達はみなおっさんの方を向き有り難く言葉をいただくばかりなのだ。時折「そうなんですか!」とか「はー、知りませんでしたわー!」などと相づちをうつ程度。せっかく飲みに来てるんだから若者同士しゃべれば良いのに。


 会社の先輩と若手なんだろうか。大変だなぁ。 おっさんが誘ったんだろうけど、何人も部下がついて来るんだからそれなりに慕われてはいるんだろうか。 まぁおっさんも悪い人ではなさそうだし、面倒見良いのかもしれない。


 とか思っていたら、その集団が帰ったあと、カウンターの逆隣に座っていた常連さんがこっそり教えてくれた。

 「あれな、どっかの工場の設備の課長と、出入りしてる営業や。 ぜんぶオゴリや。」 えー! そうなんだ。

 「そうなんすか! オゴリって・・・おっさんが若い衆におごるんですか?」

 「そんなわけ無いやん! おっさんが奢られんねん!」

 「えー!! 金はろてもらうのに、奢ってくれる相手にあんな偉そうな態度出来るんですか! 
  人間にそんなことが可能なんですか!? 俺なんか取引先でコーヒー一杯もらっただけでめっちゃペコペコしてるのに!」

 「接待なんか、みんなあんなもんやで。 普通や。」

 「普通ですか。 はー。」



 という顛末を会社で語ったら、「Iさん、いい年こいてどんな世間知らずですか」とあきれられました。うるせぇ。