格差とやらに思う

 べつにオチはないんですが、よしなしごとをひとつ。


 年功序列だの終身雇用だののキーワードが、過去の遺物というニュアンスと共に語られるようになって久しい訳ですが、10年ほど前私が社会人になった時分は、「アテにはしていないけど、残り香程度は期待する」程度には残っていました。
 でもすぐに、シュリンクする経済(と会社)の中では、年功序列のピラミッドが形成できないことに気づきます。給料上がらなくなったり、確定給付年金なくなったり、みなし管理職制度が導入されて残業なくなったり・・・。
 そこで思うわけです。俺達には「万年課長」というハズレのゴールさえも、レールの上には用意されていないんだな、ていうかレールなくなってんじゃん!みたいな。 結局、自分たちの世代は、給料が上がるまいが役職に辿りつけなかろうが、定年までひたすら走り続けるしかないだろなーとか。(ていうか定年まで雇ってもらえる制度自体、そのときまでつづいてんのかよとか)
 で、大企業に入れたら選ばれし者(エリート)、なんて過去の話になったなーと思っていたんですが、よく考えたらそうでもないんですね。 おそらくこの十何年かで企業には派遣・請負の人が増えた訳で、じつは(比較的)身分が安定して、ボーナスも有給も(一応)もらえる大企業の正社員は、実はそれなりの特権階級ではないでしょうか。 とてもそうは思えないのは、大量に会社組織の上部に溜まっている、多額の退職金と共に逃げきろうとしている世代と、自分たちの不安な行く末と比較してしまうのが原因の一つでしょうね。まぁ、若年層全体で貧乏くじを引いて、その中でも「まだまし」なのが、大企業正社員という構図といいましょうか。
 (当然、「逃げ切り世代」にも言い分はあるでしょうが。「これからインフレが来るかもしれないのに仕事はねーんだよ」とか)
 

 そう考えると、「日本はアメリカに比べたら競争社会ではない」とは言いますが、じつはきっちり弱肉強食の競争社会ではないでしょうか? しかも落伍したら再チャレンジできないからよけいひどい状態かも。
 それに、「受験戦争に勝つ→いい大学にいく→良い企業(大企業)に入る→良い生活」ていうストーリーは、いまだに細いながらも成立していて、ていうか他のルートがないままに、道が細く険しくなってきてるだけ、という風に感じます。

 
 同僚の、中国人の人と飲んだ際、いろいろ彼の国の話を聞いたんですが、とても興味深かったです。そのひとつに、「中国では、男は、受験・大学・就職そして出世、各段階でかなり熾烈に勝ち抜いていかないと、それなりの給料が得られず結婚できない」というのがありました。 まー平たく言うと「優秀なオスでないと交尾できず、子孫残せない」わけですよ。
 でも男がいくら結婚できないっていっても、それじゃぁ女の人はどうしてるの? ときくと、「ひとにぎりの金持ちの男に群がる」そうです。 うーん、なんてわかりやすい。そりゃ「一定以上の収入の男じゃないと、生活できない(そしてそれは全体のひとにぎり)」となると、自動的にそうなるわなぁ。
 まぁ彼が言ったのはもちろんかなり単純化していて、実際には例外は多々あるんだろうけど、大変だなぁと思わされました。 
 このことから、つい「中国人はドライで冷淡だが日本人は金銭以外の価値を大事にする」なんて結論を導いてしまいそうになりますが、でもそれは違うのではないでしょうか。
 最近の日本でも、非正規労働者の未婚率が高い傾向が見えてきました。 結局いままで環境が豊かだったので「メスと子どもを飢えさせず養えるハードル」が低く、低位のオスでも交尾できたけど、環境が劣化する中、そのハードルが視界に入るぐらいに上がってきたということではないでしょうか。
 ということで、さらにこの先、弱肉強食の競争社会が激化すると考えれば、実は「草食系男子」なんてのがもてはやされるのは一瞬のことで、じつはもうすでに絶滅の一途をたどっている最中かもしれません。